Amulette_Vol16

Topic産後に多い尿もれ症状

産後の悩みの一つに「尿もれ」があります。尿もれといっても、妊娠前、妊娠中、産後と人それぞれであるかもしれません。妊娠後期には、子宮の重さが約20倍になることからも想像できるように、骨盤底筋には物理的な負担が生じます。さらに、経膣分娩の場合は児頭娩出の際に骨盤底筋が大きく引き伸ばされます。
また、帝王切開の場合では腹部の切開により腹部周囲の筋力低下が生じることにより、骨盤底筋への負担が生じやすくなります。
このように、妊娠・出産を経験したママさんには、適切な骨盤底筋トレーニングを行い回復に努めて欲しいと思っています。以前も「産後の尿もれ(vol.8)」でお伝えしましたが、今回は、産後ママさんの症状に多い「腹圧性尿失禁」について触れてみたいと思います。

「腹圧性尿失禁」とは

腹圧性尿失禁は、お腹に力が入った際に尿がもれてしまう症状をいいます。
例えば、笑った時、咳をした時、立ち上がろうとした時、階段を下りている時、歩いている時、走った時、重いものを持ち上げた時など、一時的にお腹の圧を調整しなければならないような力が働いたときに尿道を締めておけず尿がもれてしまう症状です。
産後の尿もれは、おおむね3ヶ月くらいで改善することが多くありますが、分娩時の状態によっては時間を要す場合があります。また、出産経験数や基礎疾患によっても要因は異なります。
骨盤底筋は、インナーマッスルの一つとして腹圧の調整にも関わる大変重要な筋肉です。
尿もれに似たような症状に「お湯もれ」がありますが、お湯もれも骨盤底筋のゆるみが原因で膣内にお湯が入りやすくなります。

どんなことからはじめれば良いの?

骨盤底筋は、「締める」「引き上げる」「緩める」「押し出す」の動きがあります。しかし、見えない場所にあり、イメージしにくい筋肉のため、実際に骨盤底筋を働かせてみても、頭の中が「?」になることが非常に多いと思います。骨盤底筋トレーニングを始める前に意識してほしいことは、ゆっくり呼吸をすることからはじめてみましょう。

骨盤底筋は、呼吸の主役でもある横隔膜と一緒に働きます。骨盤底筋は息を吸うことで緩み、息を吐くことで収縮します。
息を吐くときに、骨盤底筋を締めるイメージで力を入れてあげましょう。
無理に大きな力ではなく、おしっこを止める(尿道口・膣口・肛門を締める)イメージです。
まずは、このような意識や感覚をつくることからはじめてみましょう。
次回は、もう少し踏み込んでお伝します。

※最後までお読みいただきありがとうございます。内容については、誤解が生じないよう学術的背景等をもとに細心の注意を払っていますが、すべての方に対して、情報の正確性、完全性、有用性について保証するものではありません。可能な限り有益な情報を配信できるよう努めておりますこと、ご理解くださいますようお願いいたします。

〜けんさんから一言〜

腹圧性尿失禁は、大変多い症状のうちの一つです。そんなこともあり「あたり前」になってしまっている可能性もあります。しかしあたり前ではありません。多くの方が改善できず一人で悩んでいますが、多数決の問題ではありません。からだに起こっている問題の一つでもあります。骨盤内臓器を支えることやからだの安定性を保つために必要な筋肉ですので、意識的にコントロールできる筋肉であってほしいと思います。実際、尿もれ予防教室を開催しても多くの方が骨盤底筋の感覚が「?」です。年齢を重ねると筋力低下が起こります。骨盤底筋も例外ではありません。
是非、関心をもってほしいと思います。


★この記事を書いた人★

国保依田窪病院 理学療法士 山﨑 健一(けんさん)

ウィメンズヘルス・メンズヘルスの専門分野を学んでいます

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