Amulette_Vol18

Topic呼吸と骨盤底筋との関係

「呼吸を整える」と良く言われますよね。呼吸そのものは、私たちが意識しなくても続く「不随意的」な働きでありながら、自分の意思で調整できる「随意的」な機能でもあります。そして、1日に約20,000回以上しているのです。妊娠中は、お子さんの成長とともに、お腹が大きくなり、呼吸は浅く、そして回数は増えます。しかし、出産後も同様の呼吸の仕方をしている人は少なくありません。
呼吸は自律神経の影響を受けますが、逆に自律神経を整える効果もあります。そこで今回は、呼吸について触れてみたいと思います。

■ 産後ママさんにとっての呼吸

出産を終えたからだは、ホルモンバランスの変化や骨盤周囲の緩み、生活リズムの大きな変化で、思っている以上にストレスを受けています。
そんな中で「呼吸」は、自分でコントロールできるからだの機能です。浅く速い呼吸が続くと、自律神経が緊張しやすく、気持ちも焦りやすくなります。反対に、深くゆったりと息を吐くことで副交感神経が働き、からだも心も落ち着きやすくなるのです。
また、授乳や抱っこで前かがみの姿勢が続くと胸まわりが硬くなり、息が浅くなりがち。少し意識して胸や肋骨を広げるように呼吸することは、リフレッシュにもなり、肩こりや腰の重だるさを和らげることにもつながります。。

■ 呼吸と骨盤底筋との関係

骨盤の底を支えている「骨盤底筋」は、妊娠・出産で負担を受ける代表的な筋肉です。以前もお伝えしたように、この骨盤底筋は呼吸と連動しています。息を吸うと横隔膜が下がり、同時に骨盤底筋もわずかに下がります。そして息を吐くと横隔膜が上がり、骨盤底筋もふわっと持ち上がるように働きます。
つまり「吐く息に合わせて骨盤底筋が自然に引き上がる」という流れが本来のリズムになります。産後はこの連動がうまく働きにくくなることがあるため、「ゆっくり吐く」呼吸を意識するだけでも、骨盤底筋を回復へと導くサポートになります。
また、骨盤底筋トレーニングというと難しく感じるかもしれませんが、まずは「息を吐くときにお腹の奥と骨盤の下がふんわり引き上がる感覚」を思い出すことでも十分です。寝る前に数回、ゆっくりとした大きく深い呼吸を行ってみることでも、からだは少しずつ変わっていきます。呼吸と骨盤底筋は、姿勢の安定や内臓の支え、排泄や咳・くしゃみといった日常の動作にも関わっています。
つまり「呼吸を整える」ことは、骨盤底筋を意識したトレーニングだけでなく、体幹の働きや生活そのものを整えることにつながります。産後のからだは大きな変化の途中にありますが、日々の呼吸を少し意識するだけで、骨盤底筋の回復、姿勢や気持ちの安定に役立ちます。

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〜けんさんから一言〜

今回は、日常の中であたりまえに行っている「呼吸」との関係についてふれてみました。呼吸は私たちが生きる上でとっても重要ですが、案外気にせずに生活していることが多いです。呼吸を行う上で欠かせない筋肉が横隔膜ですが、姿勢などさまざまな影響でしっかり呼吸ができていない人が多くいます。呼吸には「吸う」と「吐く」がありますが、特に「吐く」ことができない人が断然多いです。
横隔膜はからだの安定性に欠かせない筋肉でもあり、また骨盤底筋と内臓を挟んで上と下の密接な関係にあります。呼吸を整えることとして、夜寝る前など、ゆっくりとした深い呼吸を行い、ご自身にできる産後のからだケアとして取り入れてみてはいかがでしょうか。


★この記事を書いた人★

国保依田窪病院 理学療法士 山﨑 健一(けんさん)

ウィメンズヘルス・メンズヘルスの専門分野を学んでいます

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