Amulette_Vol21

Topic“腹横筋”で楽になる

産後のからだは、妊娠期の変化や育児姿勢の影響で、お腹の奥にある“腹横筋”が働きにくい状態になりがちです。この腹横筋は、腹巻状におなかを包み込むようにある筋肉で、姿勢の安定、呼吸、腰の負担軽減、そして尿もれ予防の土台となる大切な筋肉です。日々の呼吸や動作の中で自然に働くことが必要な筋肉です。
今回は、産後ママがすぐに実践できる「呼吸」「姿勢」「暮らしの動き」のポイントをお伝えします。

■ 呼吸で目覚める“内側のコルセット”腹横筋

腹横筋はお腹の一番深い層にある“内側のコルセット”のような筋肉で、妊娠中は赤ちゃんの成長に伴い伸びた状態になりやすく、産後は働きにくくなります。そのまま育児が始まると、抱っこや授乳で姿勢が崩れ、呼吸も浅くなりがちです。そこで大切なのが「吐く呼吸」。肩を上げず口をすぼめてゆっくりフーッと吐くことで、おへそが軽く内側に戻る感覚が生まれ、腹横筋が目覚めます。
授乳前後や寝る前など、1日に数回意識するだけで腹横筋の働きがスムーズになり、姿勢や腰の負担も軽減されます。浅い呼吸や肩呼吸の改善にもつながります。

■ 背骨が整うとからだが軽くなる理由

産後は抱っこや授乳で猫背になりやすく、腹横筋が働きにくくなります。反り腰になるとお腹の力も抜け、骨盤と背骨のバランスが崩れやすくなります。腹横筋が適度に働くと背骨が中央で支えられる感覚が戻り、自然に姿勢が整います。ポイントは無理に背筋を伸ばすのではなく、力まず立てる・座れる姿勢を意識すること。骨盤を立てて深く座り、胸を張りすぎず軽く上に引き上げる感覚をつくると、腹横筋が働くスペースが回復します。
育児中でも抱っこが楽になり、立つ歩く時間の疲れも減ります。軽い呼吸と姿勢の組み合わせが最も効果的です。

 

■ 抱っこ・前かがみ・歩くのひと工夫

腹横筋は特別な運動より日常動作で働かせるのが効果的です。まず「動く前のひと吐き」を意識。抱っこで持ち上げる前や布団を整える前にフーッと吐くと、腹横筋が先に働き腰回りが安定します。前かがみは背中から丸めず、股関節から前に倒れるイメージで動くと腰への負担を減らせます。歩くときも肋骨を締めすぎず自然なリズムで歩くと腹横筋が働きやすく、ベビーカーを押すときにも同様です。毎日の育児の中で意識するだけで、腹横筋を育てるトレーニングになります。

腹横筋は、産後ママの姿勢・呼吸・腰の負担・尿もれ予防すべての土台となる筋肉。特別な運動より、呼吸と日常動作の小さな工夫で自然に育ち、からだがぐっとラクになります。

 

※最後までお読みいただきありがとうございます。内容については、誤解が生じないよう学術的背景等をもとに細心の注意を払っていますが、すべての方に対して、情報の正確性、完全性、有用性について保証するものではありません。可能な限り有益な情報を配信できるよう努めておりますこと、ご理解くださいますようお願いいたします。

〜けんさんから一言〜

これまでも、呼吸、インナーユニット、尿もれなどのお話で、たびたび登場した筋肉です。腹横筋は、姿勢を保持するためにもとっても重要な筋肉で、女性の皆さんが気になる、おなか周りやスタイルを気にするなど美姿勢には欠かせない筋肉でもあります。
活字ではなかなかお伝え出来ないことは、子育て支援センターで実践して体感していただくことが一番です。気になる方は是非お声がけくださいね。
今年も残すことわずかとなりました。乾燥しやすく、また季節性の病気も流行る時期となります。お子さまのことだけではなく、ご自身のことも大事になさってくださいね。


★この記事を書いた人★

国保依田窪病院 理学療法士 山﨑 健一(けんさん)

ウィメンズヘルス・メンズヘルスの専門分野を学んでいます

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